こんにちは、福祉関係の話にはめっきり疎い渡辺です。
みなさんは、就労継続支援B型事業所、という名称を耳にしたことがありますでしょうか。僕は35歳になるまで、聞いたことがありませんでした。
就労継続支援事業所にはA型とB型の区分がありますが、いずれも一般企業や事業所で就労することが困難な方に働く場所を提供し、知識や能力を向上させることを目的とした場所です。
こうした施設は全国津々浦々、遍く存在していますが、2022年、我らが若葉区にも新たに事業所が誕生しました。そうです、特定非営利活動法人SORAさんです。
別記事で、そらカフェさんの紹介をさせていただいたのですが、同じ法人様が運営されております。
今回は、カフェや就労継続支援事業所の運営について、代表の田中加奈子さんに伺ったインタビューの内容をお送り致します。是非、最後までお読みください。
✅この記事の内容
- そらカフェオープンに至ったきっかけ
- 『食』に特化した事業所を選ぶ3つのメリット
- 就労技術や生活向上を目指し個々の特性を伸ばしていくことが就労継続支援事業所の存在意義
- 障害を持つ方が自立するために“共生社会”との結びつきは必要不可欠
✅この記事を書いている人:渡辺大悟
- 1986年生まれ、牡羊座、A型
- 千葉県出身、千葉市若葉区に移り住んでから10年目
- 得意不得意の凹凸が激しくやらかし気味だが、誰かの役に立ちたいと思っている
詳細はプロフィールに書いたので見てください🎶
✅特定非営利活動法人SORA施設長:田中加奈子さん
- 社会福祉士、サービス管理責任者
- 障害者作業施設職員として7年間勤務の後、地域の飲食店の調理に携わった経験をきっかけとして、就労継続支援施設運営を決意
- 2人の男の子の母親としても奮闘中
そらカフェについて
そらカフェの名前の由来
『そらカフェ』という名前の由来を伺って良いでしょうか。
空(そら)って誰にでも広がってますよね。誰とでも繋がれる、地域と繋がる場所という意味合いで、そらカフェと名付けました。それしか出てこなかったですね。あと、下を見るんじゃないくて、上を見上げるって意味合いもあります。
イメージ合ってますよね!
写真撮る時も必ず空は映ってますしね。みんな、縦ではなく横の繋がりがある、広く続いていくっていうイメージです。すごくシンプルです。私、単純なので(笑)
カフェをオープンしたきっかけ
福祉施設と併設されているのですが、どういうところからカフェを選ばれたのでしょうか。カフェをやろうと思ったのが先か、それとも福祉施設が先なのでしょうか。
B型事業所として対価をいただけるもの、また質の良い仕事を提供できるものを模索した結果、カフェというスタイルに行き着いた、というのが一点です。実は私、10年前に障害者の作業事務所で勤務していたんですけど。
そうだったんですね!
はい、7年ほど勤務させていただきました。当時、障害の子たちにやってもらう仕事を、企業さんから頂きやすかった反面、やはり単価が安く抑えられてしまっていたんですね。例えば、コンビニの袋に1枚チラシを綺麗に入れて、折り目を戻して100束数えてクリップで止めて、っていう作業が、1枚あたり0.6銭くらいでした。
障害の特質によって不得意なこともありますが、工夫して支援を重ねていけば、早いしきちんとできる子もたくさんいて、中には私たちよりも質の高い仕事をできる子もいて。持っている才能を引き出せば、すごく良いものが作れるんですよね。そこで、もっと対価の高いものとしてできるものはないか、ということで今に至ります。
なるほどー。
もう一つは、このカフェを始める前に、地域の飲食店で調理の仕事に携わらせていただいた経験から来ています。利用されるお客様は高齢の方が多かったんですが、「最近、なかなか食事をきちんと作らなくなった」とか「独居なので偏食がちになっている」というお声をたくさん聞きました。また、車が運転できなくなり、杖をついて歩くようになると、居場所がなくなってくるんですよね。そういう局面を見てきたので、『きちんとした食事ができる居場所』を作ろう、と思って飲食の形にしました。
確かに、この若葉区も高齢者の方多いですからね。
そうなんです。そらカフェに来られるお客様も高齢者の方が多く利用されています。先日、病院の待ち時間が長くて「チラシを見て来ました」というご夫婦にご来店いただきました。ご主人が車椅子の方だったのですが、バリアフリーのお店が近くにないため、そらカフェはバリアフリーで安心して利用できる場所としてお越しいただきました。ランチ時間だったんですが、「本当に久しぶりに外で食事した」ってすごく喜んでいただけました。
確かに、車椅子の方でも入りやすいお店って少ないですよね。そらカフェなら広いですし、気兼ねなく入れると思います。
もちろんウチは、どなたでもご利用いただけたらな、と思っていますが、少しお身体不自由な方でも“理解”してもらえるんじゃないか、と思っていただきやすいのかなと、(カフェを)始めてみて感じています。そこが(B型)事業所としての強みですね。
『食』に特化した事業所を選ぶ3つのメリット
利用者自身の食や栄養が整う
カフェと事業所は、今後どう関係していくイメージでしょうか。
はい、利用者さんの就労訓練や余暇活動、また生産活動に関して、主に『食』が共通しているのが特徴だと思います。繰り返しになりますが、この地域では高齢のご夫婦やお一人で暮らしている方も多いので、家族が減ると食事が偏りがちになりますよね。そこでそらカフェでは、“主食・副菜・主菜”を取り入れたメニューをお出ししています。
そういうカフェが近くにあると、すごく助かると思います。
ありがとうございます。地域のみなさんがお昼にテーブルを囲みながら談笑できる場所として始動しましたので、コンセプトはゆったりくつろげる空間と、彩りとバランスの取れた食事なんです。で、そこを就労訓練の場としても活用していく予定です。身だしなみ・清掃・洗い物・調理の支援プログラムを取り入れるだけでなく、食育プログラムを計画していて、事業所内に家庭菜園を作ろうと思っています。
なるほど、庭がものすごい広いですもんね!
みんなで野菜の種を蒔いて育てて、自分たちが作ったものを調理して食する、このプロセスを体験しながら、食べることの大切さや調理知識の関心を深めることが、このプログラムの目的です。
やっぱり食が基本!って考えがあるんですね。
そうですね、まずは“食べることとは?”に興味を持ってもらいたいです。今の時代、便利に加工されて手軽に食卓に出てくるものですから、育てる・収穫する・調理するの工程を知らない子たちがたくさんいますよね。食材の知識を学びながら、この体験プログラムを通じて、野菜嫌いや偏食が少しでも改善され、みんなで協力して料理することの楽しさを体感してほしいです。
一般就労に近い訓練が受けられる
『食』と言っても、調理することや食べることだけではないですもんね。
そうですね。清掃や洗濯の衛生面や自身の身だしなみ、接客もそうですね。業務としては一般のカフェと同じですので、色々なものが学べると思います。
SORAさんのように、就労継続支援事業所でありながらカフェ運営もしている施設って意外と少なくないんですね。
いらっしゃいますよ!中には利用者さんが資格取得にチャレンジしている素晴らしい取り組みの事業所さんもあります。私たちも是非、「資格取りたい!」という方の相談を受けることがあれば、できる限り応援したいと思います。
実現できると良いですよね。
就労を目指す利用者さんが個々の能力を伸ばし、自身の強みに変えていける支援を目指したいですね。
コミュニケーションの機会が増える
カフェはオープンしたばかりですが、結構お客様来られてる印象なんですね。まだ1ヶ月足らずですが、どうやって集客されてるんでしょうか。
実は、ここをオープンする前からマルシェとか地域のイベントに参加させていただいて、宣伝活動をしてきました。チラシをお配りしたり、事業所のパンフレットをお渡ししていったのですが、回を重ねていくと顔なじみのお客様が増えて、お声をかけていただけるようになりました。また、近隣は病院や施設も多いので、高齢の方やバリアフリーを利用される方のカフェとしてご利用いただけるよう取り組んできました。少しずつ新規のお客様も増えてきて、「チラシもらったので散歩がてらに来ました」と言っていただいた時はすごく嬉しかったです。福祉事業所母体強みを活かして、多様な方に安心してご利用いただきたいですね。
素晴らしいと思います!交流の機会が増えることで幅広い方とのコミュニティができますね。
そうだと思います。利用者の方が地域との繋がりを持ち、コミュニティを広げていく体験の場として『そらカフェ』がありますし、施設内でのイベント活動も積極的に取り入れたいですね。現在も、まちづくりに力を入れている団体の方、地域活動で場所を必要とされている方たちには空き部屋をご利用いただいたり、当事業所が掲げるまちづくり推進の一環としてお手伝いをさせていただいています。
就労継続支援施設の存在意義とは
就労技術や生活向上を目指し個々の特性を伸ばす
(就労継続支援)事業所さんごとに特色って結構あるものなんでしょうか。
はい。封入や付録作り、箱折りや事業所独自の自主生産品を製造するなど、特色は様々です。飲食の場合ですと、お菓子製造やお弁当、パンを作って店舗販売を行ったり、ネット販売であったり、最近では居酒屋さんを運営している事業所があるとお聞きしました。どの事業所もアイデアを盛り込んだ生産活動を行なっているので大変勉強になります。
なるほどー、僕も勉強になります。
こうした就労訓練を通して、利用者さんの働く意欲や就労技術を高めていく支援を提供することが私たちの役割です。障害を持つ方々の得意分野を伸ばしていくためには、支援者側の意識が大事だと思います。支援のプロセスを経た結果、私たちよりも利用者さんの方が遥かに質の良い製品を作ることができるようになったりするんですね。私たちが教わることも沢山あるので、支援者・利用者双方がお互いに成長できる関係性を、SORAでは大切にしていきたいと考えています。
現在少数精鋭で運営されていて、利用者さんもこれから少しずつという段階だと思うんですね。だからこそ、一人ひとりに目が行き届くという側面もあるんでしょうか。
その通りだと思います。人が増えていくと、雰囲気も違ったものになってくるでしょうし、支援方法も変化していきます。事業所理念の軸をブラさずに最善策を考え、見直すことが大切です。事業所内での活動だけでなく、当事業所の取り組みを周知し、地域の繋がりを持ちながらお役に立てる活動を目指していきます。
福祉施設の枠を超えた地域社会貢献
まさに社会貢献ですね。
近隣には様々な取り組みを行なっている他職種の方々がいらっしゃいます。各々が地域でどういう活動を行っているか、意見交換や情報共有をしながら、連携・協力の体制作りを行なっています。この“横の繋がり”の関係性を構築することが、社会活動にはとても重要なことだと実感しています。
地域社会に積極的にアプローチしていくスタンスというか、そこがSORAさんの活動の核だと感じました。
利用者さんも地域の方も区別なく「◯◯で困ってるんだけど」とか、相談いただきたいですよね。解決できる困り事があるかもしれませんし。必要だから頼っていただける存在(になる)というのが理想です。垣根のない事業所っていうのもあってもいいじゃないですか。
今は少し変わって来たかもしれないですけど、(福祉施設って聞くと)やっぱり少し敷居が高いような感じがまだあるような気がします。そこのハードルがもっと下がっていったら良いですよね。
今は多様性と共生社会が重要な時代だと思います。私たちの活動も暖かく見守っていただきたいですし、SORAのみんなで地域のお役に立てる取り組みをコツコツと続けながら、コミュニティの幅が広がることを目指していきたいです。
障がい者の自活のためには共生社会であることが必要不可欠
利用者の方に自立して欲しいっていう気持ちの表れなのかなと感じました。
(利用者さんの親御さんとの)面談では、親御さんご自身が亡くなった後、お子様たちの将来を不安だというご相談が多く寄せられます。就労の問題もそうなんですが、自立した生活を送る、という点ですね。そこで、『食』を通じた支援はやはり有効ではないかと考えています。掃除も洗濯も、食事だって日常生活では必要な作業ですから、目玉焼きが焼けるようになった、身の回りの事が自分でできるようになった、そんな将来を見据えた取り組みを目指して、利用者さんの成長した姿に期待したいですね。
この話、実は今日一番伺いたかったトピックなんです。実は、僕も小学校の頃同級生で支援学級に通う子がいたり、営業マン時代も福祉施設のお客様がいたりとかで、障がいを持った子は、親が亡くなった後どうなるのかって思い至る機会がありまして。就労継続支援施設を探されているご家族の方も、その辺りがすごく不安に感じている方多いと思うのですが、そこに対してどうお考えでしょうか。
利用者さんにとって本当に切実な問題だと思います。障害レベルによって年金が支給されるので、生活面でのサポートを受けられるグループホームに入居される方もいらっしゃいます。近隣にタイミングよく空きがあるかはその時の状況によると思いますが。
年金が出ない場合はすごく心配ですね。
はい。年金対象外と認定された軽度な方は、将来的に生活収入を確保しながらどのような生活を送れば良いか、ご本人やご家族も本当に不安を抱えています。利用者さんの年齢層やご家庭の事情によっても様々ですが、利用者さんやご家族が高齢になるほど将来の不安は大きくなりますよね。社会問題として“8050問題”が取り上げられるように、こうした課題は稀ではないということですね。
そうなると、一つの事業所だけの問題ではなくなってくると思うんですが。
本当にそうです。当事業所だけで解決できない内容は、行政・福祉・医療機関との連携を図りながら情報共有し、利用者の方に緊急を要することであれば迅速に、専門分野の担当先へ委ねることもあります。他職種先の知識と繋がりを持つことが必要不可欠ですね。
引き出しがいくつあるかが大事ってことなんですね。
そうなんです。私自身も(過去、事業所勤務だった)当時は全く引き出しがなくて、どう助言すべきか壁にぶち当たる現実に直面しました。知識の限界に悔しくて、情けなくて、今でもその当時の事をよく覚えています(笑)今は国家資格も取りましたし、実習現場で他職種機関先の訪問や現場体験をさせていただいたので、支援の幅が広がりました。
まさにこれからが本領発揮ですね。
障害を抱えたお子様を持つご家族様は、安心して生活できる環境の中で、自立した生活を送ってほしいと願っています。世の中がこうした状況を実現するためにも、地域と多くの関係機関先との協力・サポートが重要です。当事務所も“共生社会”を目指して、利用者さん、ご家族様、地域の方たちの架け橋になれるように頑張ります!
編集後記
今回、田中さんにインタビューさせていただくきっかけとなったのが、とあるイベントに参加した際、会場となったのがSORAさんだったからです。
敷地は広大で、建物はめっちゃ綺麗。福祉施設なのにカフェも併設されている。どういった空間なのか、どうしてここ(=若松町)の場所を選んだのか、すごく興味がありお話を伺いたいと打診したところ快諾していただけた、という流れです。
実は、就労継続支援B型事業所としては、オープンはこれからというところ。カフェの方を先行オープンされたということなので、数ヶ月後に再訪して改めてお話を伺いたいなと思っています。個人的には、広い敷地の家庭菜園がどうなるのか気になります(笑)
と、いうことで今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました🎶
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